【世界に誇る食のクリエイター】米国事業はこれからどうなる?日清食品HDの米国事業と財務健全性について深掘り!
【世界に誇る食のクリエイター】日清食品HDの米国事業と財務健全性について深掘り!
ゆとらの財務らぼへようこそ!!
今回は日清食品HDのビジネスモデルと財務状況について解説していこうと思います!
日清は直近1、2年ほど下落続きということもあり「今後株価は上がるのかな?」や「今後の成長は期待できるのかな?」と思う人も多いはずです。成熟企業であっても株価などの適正な評価をすることはとても難しいです。そこで今回は日清のビジネスモデルや財務状況を解説をしていこうと思います!
日清がどのようなビジネスモデルを持ち、どのような財務状況であるかを理解することで、現在の株価に依存しない長期的な視点を持つことができます。腰を据えて日清食品HDに投資をしたい人はぜひ最後まで読んでください!
「米国事業についてもっと知りたい!」や「投資CFのキャッシュアウトや有利子負債など財務健全性について不安になってしまった…」と思った人もいると思います。直近の株価下落の一因と考えられる米国事業の不振は気になる点だと思います。そのため今回は米国事業の深掘り、原材料価格チャートの分析、財務健全性に重点を置いた財務分析を行っていこうと思います。この記事を読むことで米国事業について理解が深まったり、日清が財務健全であるかを判断できるようになったりします。日清の不安材料を理解し、投資判断をしたい人はぜひ最後まで読んでください!
ビジネスモデル
事業内容
はじめに事業内容からです。日清は主に①国内即席めん事業②国内非即席めん事業③海外事業の3つのセグメントから構成されています。
国内即席めん事業
国内で販売する即席めんの製造を行う事業。
日清食品の「カップヌードル」や「どん兵衛」、明星食品の「一平ちゃん」などを販売しています。
国内非即席めん事業
国内で販売する即席めん以外の製造を行う事業。
冷凍パスタや湖池屋のポテトチップス、乳酸菌飲料の「ピルクル」などを販売しています。
海外事業
米州や中国で即席めんなどを販売する事業。
米国や中国、ブラジル、アジア地域などで販売を行っています。
日清はカップヌードルのみならず、様々な製品を世界100カ国以上の国と地域で販売しています。また、日清の「チキンラーメン」は世界初の即席めんであり、「カップヌードル」は世界初のカップめんです。このような世界初の製品を作り、普及させる日清は「世界に誇る食のクリエイター」と呼ぶにふさわしいとゆとらは思います。
そして、そのブランド力を示す指標の一つであるグループの取得している特許件数は国内で584件、海外で854件(2024年度時点)と知的財産の保護なども徹底されています。
セグメント別

(2025年3月期 売上収益ベース)
セグメントの売上収益の比率はバランス良く分散が効いています。日清にとって海外事業の成長は単に収益増や為替による増収の期待のみならず、小麦やパーム油などの原料輸入の為替リスクを抑える効果(ナチュラルヘッジ)にもなります。海外事業が40%程度ある現状は安定性のあるセグメント比率の構築ができていると考えられると思います。
地域別

(2025年3月期 売上収益ベース)
地域別では、日本に次いで米州(米国、ブラジルなど)が多く、米国で2022年度に大幅な価格改定を行ったことで売上比率を向上させたと考えられます。他には中国やアジア、EMEA(欧州、中東、アフリカ)と全世界に製品を届けています。
また各地域ごとに米州はプレミアム即席めん市場の拡大、中国アジアではプレミアム即席めんや激辛めんなどの市場開拓などニーズとシェアに沿った戦略を立てています。
財務らぼ
※日清食品HDは2017年4月1日に、会計基準を日本基準から国際財務報告基準(IFRS)に変更しました。本記事では有価証券報告書の記載に準拠し、2018年3月期までを日本基準、2019年3月期以降をIFRSを用いて記載しています。また、各勘定科目は日本基準に合わせて記載しているためIFRSに記載されている科目と異なる場合がありますのであらかじめご了承ください。
売上高・営業利益・営業利益率


売上高は右肩上がりを続けており、景気に左右されない強みが出ている業績です。近年は全世界的なインフレの影響を受け、国内外で値上げを行ったことで売上が増加していると考えられます。また、値上げにより増収を達成しているのはブランド価値によって値上げ後も販売数が急減しなかったことを示し、日清のブランド力の強さを示す物だとも考えられます。
一方で、営業利益は、2022年3月期や2023年3月期に一時下落をしています。これは減価償却費の増加と原材料費の高騰を受けたためです。その後は価格転嫁を実施できて営業利益は回復しましたが、現在でも全世界的なインフレが続くため減益する可能性を考慮する必要があると考えられます。
2025年3月期は史上最高益を出した中で、米国事業が前年比で減益となりました。統合報告書内では、安藤CEOが「一部課題の残る結果」、矢野CFO「韓国系商品を含めた競争激化があった」と言うように、現在米国事業は課題を多く持っている状況であり、この厳しさが株価に少なからず影響を与えていると考えられます。
ROE・EPS・BPS


ROEは8%を超えることが多く、高収益・高効率といえます。基本的には純利益率主導のROE上昇と考えられますが、借入をして財務レバレッジを高める事もあります。そのため今後急激なROE上昇があった場合には、ROE上昇の健全性は調べる必要があると考えられます。
ROEの詳細な解説はここから

EPSはほとんど右肩上がりで上昇しており安定感があります。配当性向は中期経営計画で40%程度とされているため、今後右肩上がりで上昇を続ける場合は配当金も共に右肩上がりになるため、EPSは日清の株式を長期的に保有する一つの明確な根拠にしうると思います。
BPSは10年間微増を続けています。また、株価下落を続けている今でも株価はBPSよりも高くPBRが1倍以上であるため、現状ではまだ市場は日清への期待感を持っているとも考えられます。
キャッシュフロー計算書


営業CFは安定してプラスを維持しています。売上高同様に景気に左右されない強みが出ています。
投資CFのキャッシュアウトは多くが工場などの有形固定資産の購入によるものです。2024年3月期と2025年3月期には、米国サウスカロライナ州に米国3番目の生産拠点を作るために合計1,300億円以上の設備投資を行っています。関税リスクが存在する中で米国内の生産拠点が充実することでコストを抑えることができるため、新工場が米国事業の回復の要因になることが期待されます。
フリーCFは投資CFの総量に依存するようにプラスとマイナスを不安定に推移をしています。そのため、大きな設備投資をする際には主に借入金から資金を投入をしており、サウスカロライナ州の新工場も2025年3月期に社債発行により約500億円を調達しています。
財務CFは、配当金の支払いや自己株式の取得、借入金の返済によりマイナスになります。また、社債や借入金による資金調達をした際にはプラスとなっています。
フリーキャッシュフロー(フリーCF)の詳細な解説はここから

配当金・配当性向

配当金は2000年度から累進配当を続けています。中期経営計画でも配当性向40%を目安に累進的な増配をすることを明言しており、長期保有に向いている銘柄であると考えられます。
また、株主還元は配当金のみならず機動的な自社株買いと株主優待があるため総還元性向は配当性向の40%超えるため上記のグラフよりも高還元の株主還元を意識した企業と言えると思います。
米国事業について
はじめに、米国事業について深掘りをしていきます。ここでは、統合報告書等に記載されている情報から現在の米国事業の状況と日清のスタンスを把握し、ゆとらの考察を交えて解説をしていこうと思います。
これまでの米国事業の概観
日清は1970年に米国事業を開始し、50年以上米国にて即席めん販売を行ってきました。2004年にはプレミアム市場を開拓し始め、2015年以降は現在に至るまで(プレミアム市場は)年平均19%の成長を遂げるなど、近年の米国事業はプレミアム市場の成長によりけん引されていました。加えて、2022年度には大幅な価格改定を行ったことで営業利益や営業利益率の改善もされました。
現在の米国事業と課題
2024年度の米国事業について、日清は以下のようにまとめています。
市場について
- 「手頃な」即席めん市場は底堅く推移
- 高付加価値市場は拡大している
日清の事業について
- 米国西部では販路が減少
- 米国南部に展開をできたことで全国展開を達成
その他
- 米国事業は減益
- 矢野CFO「競争激化があった。」
これらの状況から、ゆとらは現状について①米国の高付加価値市場(プレミアム市場)は成長をしつつも鈍化している。②インフレの中で競合にシェアを奪われた可能性がある。と考察しました。
今後の展望
日清は米国事業におけるニーズついて、主に①「利便性」②「健康志向」③「グローバリゼーション」の3つを重要なニーズと考えています。
そして、各ニーズに対して2025年度には以下のように満たしていこうとしています。
- 「利便性」⇒電子レンジ対応の容器で販売
- 「健康志向」⇒高タンパク質即席めんの販売
- 「グローバリゼーション」⇒アジアンフレーバーの販売
原材料価格について
日清は主にマレーシアからパーム油を、米国やカナダから小麦を輸入しています。
これらの価格は売上原価に直接影響を与える重要な要素です。ここでは、パーム油と小麦の月次と年次のチャートを元に売上原価にどのような影響が出るかについて分析していこうと思います。
パーム油価格チャート
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(世界経済のネタ帳より引用)
(上図:円建月次チャート 下図:円建年次チャート)
2022年前半が突出して価格が高騰しています。その後は下落しつつも2024年10月以降再度乱高下しており、今後も上昇する可能性を帯びています。
年次で見るとパーム油自体の価格高騰のみならず、為替の影響で上昇していることがわかります。
小麦価格チャート
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(世界経済のネタ帳より引用)
(上図:円建月次チャート 下図:円建年次チャート)
小麦価格もパーム油同様に2022年に高騰しています。しかし以降は下落トレンドであり、パーム油ほど注視する必要は無いと考えられます。
また、小麦とパーム油共に2020年代以前は緩やかな上昇をしてきました。コモディティの上昇はインフレに直結しやすいことを考えると、やはり今後もインフレのトレンドは緩やかに続くと考えて良いとゆとらは感じました。
財務らぼ
今回の財務らぼは、財務健全性を重視した財務分析を行っていこうと思います。
そのために、まずは2025年3月期のB/S(貸借対照表)を見ていきましょう。資産で一番多くの割合を占めているのは有形固定資産です。この有形固定資産は、工場やその工場内の機械などであると考えられます。投資その他の資産は主に政策保有株と関係会社株式が当てはまると考えられます。日清は政策保有株として伊藤忠商事や三菱商事などの株式を保有しています。政策保有株は2025年3月末時価で約457億円も保有しています。その結果約1,890億円もの投資その他の資産を有する状況になっていると考えられます。
B/Sを図解することで流動比率や自己資本比率などの財務健全性は問題ないことが分かります。

(単位:百万円)
(2025年3月期 有価証券報告書より)
当座比率
続いては当座比率です。当座比率は流動資産の中でも棚卸資産などを除いた当座資産と流動負債の比率を表す指標です。借入などの返済は棚卸資産では返済できないため、実際に返済に利用できる現金や債権などを利用して実態に沿った財務健全性を示すことのできる指標です。
当座比率
当座比率(%)=(当座資産)÷(流動負債)×100%
当座資産=(現金等)+(営業債権、その他債権)+(短期金融資産)
簡便法で「当座資産=(流動資産)-(棚卸資産)」もあります。
今回は現金、債権、金融資産の合計を用いています。

一般的に当座比率は80%以上あれば健全であると判断されます。2019年3月期までは借入があるのにフリーCFがマイナスなことも多く、結果的に短期の安全性は右肩下がりになっていました。しかしコロナ禍でステイホーム需要を取り込んで業績は増収増益となり、それに伴って当座資産も増加し一時は当座比率は100%を越える健全性を見せました。
2023年3月期以降は、当座資産が増えつつも当座比率が下落しています。これは当座資産が増えつつも、それ以上に負債の増加が大きかったため下落していると考えられます。
EBITDA
※統合報告書より引用したEBITDAとネットD/Eレシオに用いた有利子負債は、単位が「億円」となっていたため億単位の概数にて表示していますので、あらかじめご了承ください。
EBITDAは「Earning Before Interest Taxes Depreciation Amortization」であり、日本語では「利払前税引前償却前利益」となります。利息や税金、償却費を足し戻すため、営業利益よりも純粋な営業で稼ぐ力を表すことができます。
EBITDA
EBITDA=(営業利益)+(償却費)※
※償却費は有形固定資産の減価償却と無形固定資産の償却を表す。
純粋な稼ぐ力を示した日清のEBITDAは以下のようになっています。

ほとんど右肩上がりになっています。償却費を控除する分、営業利益よりもブレがなくなっています。また、営業利益と比較すると2,000~3,000億円程度EBITDAが多いため、日清は毎年2,000~3,000億円ものキャッシュアウトの伴わない費用を計上していることが分かります。
比較:営業利益とEBITDA


ネットD/Eレシオ
ネットD/Eレシオは、純有利子負債を株主資本で割った指標です。基本的に1倍以下が健全と判断されます。
ネットD/Eレシオ
ネットD/Eレシオ(倍)=(純有利子負債)÷(株主資本)
純有利子負債=(有利子負債)-(現金等)

日清のネットD/Eレシオはほとんどの年でマイナス、つまり有利子負債の総額より現金等の総額が多い状況にあります。
ネットD/Eレシオがプラスになった2020年3月期は有利子負債が前年より200億円以上増加しました。しかし、翌年に有形固定資産と無形固定資産が増加しており、有利子負債はこれらに利用されたと考えられます。有形固定資産は工場や機械などの購入と考えられ、無形固定資産は2020年11月に子会社化させた湖池屋の株式の買付け費用になったと考えられます。これらの投資も一因となり、翌年から売上高や営業利益はさらなる上昇トレンドに乗り、有利子負債を用いて適切な投資が行われたと評価して問題ないと考えられます。
2025年3月期には前年度から有利子負債が800億円弱増加し、約1,355億円となりました。この有利子負債の増加は、サウスカロライナ州の工場の建設に用いられたと考えられます。この新工場が翌年以降の決算にてどのような影響を与えるのか見所になると思います。瞬間的にネットDEレシオはプラス圏になりますが基本的にはマイナス圏にいるため財務健全性はしっかりしていると考えられます。
まとめ
今回は日清食品HDについて深掘りしてみました!
右肩上がりの売上高やEBITDAや基本的にマイナス圏のネットD/Eレシオ、累進配当など安定感のある銘柄だなとゆとらは感じました。一方で成長事業の米国事業の鈍化はやはり注視する必要があるため、今後も動向を追いたいと思います。
まとめ
- 世界100カ国以上で即席めんなどを販売している
- 海外売上比率は40%程度
- 売上高、EPSは右肩上がり
- 営業利益は原材料高などで一時的に下がった
- 営業CFは安定、設備投資は借入を用いて行う傾向
- 累進配当を24年以上行っている
まとめ
- 年平均19%成長の米国プレミアム市場は成長鈍化
- 為替&インフレで原材料価格は高騰
- 当座比率、ネットD/Eレシオは安全圏で推移
- 年間2,000~3,000億円の減価償却が行われている
B/S:
P/L:
C/S:
株主還元:
成長性:
効率性:
安全性:
これからも様々な企業の分析を行っていきますので、よければ別の記事も読んでいただけるとうれしいです!!それではまた次の分析でお会いしましょう!!
〈参考資料〉
日清食品HD IR情報 統合報告書2025
日清食品HD IR情報 有価証券報告書(2016年3月期~2025年3月期)
世界経済のネタ帳 コモディティ 小麦・パーム油価格
注意
本記事で紹介している分析方法等は個人的な視点のもので、銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。また、本記事の分析は記事公開時の情報に基づいています。同日以降に発表された情報などは反映していませんので、あらかじめご了承ください。
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